虚偽の二分法
規制とは気まぐれで不可解なものですが、これを腐敗とそれを告発する検察官との華麗なる繰り返しの物語の比喩として推論することができます。規制は弁護士の道具です。しかし、すべての道具と同様に、それらは粗雑で、古いか、もしくは単に誤用されるかもしれません。
仮想通貨は人間の有様や物語の反復パターンを変えるわけではありません。最善を尽くしたとしても、詐欺、悪意のある者、最悪の事態などは常に存在します。仮想通貨は人間の判断を無視することができますが、その性質を取り除くことはできません。
仮想通貨の設計者は、規制者が悪事を修正するためにどのようなツールキットを提供するべきかについての立場を選ぶ必要があります。仮想通貨は規制と通貨における失敗の産物28であるため、独自の課題に直面しています。
文化的に、多くの仮想通貨は、政府の行動が腐敗、不適切、または無効であると見なしています。したがって、規制者や弁護士が過ちを正すための特別な措置を提供することに対してほとんど敬意を払いません。この行為は、仮想通貨の存在意義に反しているためです。
一方、2009年1月3日にプロトコルが開始して以来、10%以上のビットコインが紛失及び盗難被害に遭いました。2017年6月30日現在、その被害額は40億ドルを超えます。この数字には詐欺や、ずさんなICOによって失われたビットコイン、またその他のトークンが含まれていません。
また、プライバシーに関する問題があります。マクロ規模では、価値は規制、豊富なメタデータがあり、法執行機関、政府機関、国際的な規制機関によって積極的に監視されている特別なチャンネルを通じて流れています。これはしばしば紛失騒ぎに揺れる現金の世界ではよく行われることです。しかし世界がデジタルマネーに移行するにつれ、価値の紛失は徐々に減少しています29。
よって仮想通貨が存在しなかった場合のパラダイムは、金融プライバシーをソーシャルメディアコンテンツのように扱う世界になっていたでしょう。そこにはプライバシーもなければ、システムから逃れることもできません。したがって、我々には明示的な二分法を生み出すジレンマがあります。
仮想通貨の設計者は、その原則を放棄し、管轄のいかなる要求にも応じてしまうことで、ユーザーのプライバシーと完全性を損なうかもしれません。また設計者は、現代のベストプラクティスや法律を無視した、より原理的ながらも無政府主義の哲学を採用することができます。
カルダノでは、この物語が想像力の欠如によってもたらされた、誤った二分法であると感じています。現実には、ほとんどのユーザーは市場に存在するルールを気にしていません。彼らは通常、単一または複数のアクターが自己利益のために突然ルールが変更されることを懸念しています。また彼らは、誰に特権が与えられているのかが不透明であると、不安になります。
我々は、個人と市場の権利を区別する必要があります。仮想通貨が世界的に普及していることを考慮すると、権利は可能な限りユーザー指向である必要があります。
プライバシーは合理的であり、その管理はゲートキーパーではなく、ユーザーによって行われなければなりません。また、価値の移動は自由であり、ユーザーの同意なしに突然没収されるようなことはあってはいけません。
市場の観点からすれば、市場はデータの使用方法、資金の取り扱い方、およびユーザーが規則を遵守していることについて透明性を確保する必要があります。さらに、ユーザーが同意した後は、不都合故に突然規則を変更することはできません。また取引先にも確実性が必要です。
しかし、抽象的なものから具体的なシステムを生み出すにはどうすれば良いのでしょうか。また、実用的かつ合法的なものとは一体どのようなものなのでしょうか。我々はその解決策をメタデータ、認証、コンプライアンスおよびに市場DAOの3つのカテゴリに分けて考察しました。
脚注
28: 実際、ナカモトサトシ氏はタイムズ紙の見出しを引用したものをビットコインのジェネシスブロックに埋め込んでいます。タイムズ紙、2009年1月3日「銀行の第2次救済措置の危機」
29: 読者は、David Wolman氏のThe End of Moneyを是非読んでみてください。それは現金消滅への国際的な動きを網羅しています。